6月26日~30日まで、ワールドカップ開催中のロシアにて、FIFAセミナー「Captains of Today , Leaders of Tomorrow」が行われました。
2018年U20女子ワールドカップ出場国キャプテン(14名)、各大陸連盟から推薦された育成審判員(6名)が参加しました。
◆堀川 うらら 2級審判員(埼玉県)
今回AFCからの推薦を受け、このセミナーに参加させていただきました。この知らせを受け、普段参加できない貴重な機会であり、とても光栄なことであると思いました。
ロシアまでは、日本から飛行機で約17時間かかり、時差が−6時間でした。気温は高いですが湿度が低く過ごしやすい気候でした。街中はワールドカップ期間中でとても賑わっており、至る所にボランティアの方がいました。
セミナーは、選手との合同セミナーということで、このような合同セミナーは初めてでしたので、新しい雰囲気を感じました。また、基本的には英語で行われ、様々な言語の選手や審判員がいたので、フランス語とスペイン語も同時通訳され、3か国語を使ったセミナーでした。
このセミナーの中で、何を一番主張していたかというと“女性のリーダーを育てる”ということでした。選手として、審判員として、人として。
私が一番印象に残っているのは、最初にFIFA総会の写真が出てきて、この写真を見て分かることは?と言われました。その写真には多くの国や大陸の役員の方が写っているのですが、どこを見ても男性です。私は、その事実に驚きました。日本でも女性の指導者・リーダーとして先頭に立っている人は少ないですが、世界に出ても同じ現状であると思うと同時に、女性の指導者・リーダーの重要性を感じました。
基本的には座学ですが、ただ座っているだけではなく、“あそび”を取り入れ、身体を動かしながら自分らしいリーダーシップを見つけ出し、身に着けるという活動をしました。
FIFA legendのセッションには、元カナダ女子代表のカリナ・ルブラン氏が講話をしてくださりました。パワフルで情熱的でとても勇気をもらえる方でした。その中でも特に印象的だったのは、“リーダーであるには、覚悟と自覚をもたなければいけない。また、疲れた、忙しいとは絶対に口にしない。さらに、子どもたちにサインを求められてもそのようなことを理由にせず、きちんと応える。そうすることで子どもたちのお手本や夢にも繋がることができるかもしれない。さらに、試合の前後で審判員や相手チームと握手をするけど、審判員の判定に納得できないことや、相手選手に苦手な人がいてもしっかりと目を見て握手をする。試合は、審判員と選手たちの共同作業である。”というお話でした。この話を聞いて自分自身の生活や行動を見直す機会にもなり、真のリーダーについて考えさせられました。
また、元国際審判員のカリ氏より、審判員についての講話もありました。選手も一緒に受けていたので、このセッションをすることで将来選手から審判員になる人、審判員をリスペクトしてくれる人が現れることを望んでいました。カリ氏がレフリーになってよかったことは、色んな壁がなくなったこと、試合の中でリーダーになれたこと、他の女性の目標になれたことであると言われていました。現在、FIFAとしても男女平等を目指すために、男子の試合に女性の審判員を送り込んだりしているが簡単なことではないと言われていました。最終的な目標としては、男子のワールドカップに女性の審判員を送り込むことであるそうです。
さらに、女性のセミナーでしたので、女性ならではの質問も多く出ました。“結婚や、出産をしても審判員を続けたいがその場合のサポートはあるのか”という質問に対し、“女性の結婚や出産は人生においてあるべきことであるので審判をすることがその妨げになってはならない。女子サッカーの文化、審判員の体制を変えていくようFIFAでも後押ししています”とのことでした。現在15%の国際審判員が出産を経験し、今年も7%の国際審判員が出産予定であるというデータも見せていただきました。
さらに女性は、どこの国もプロの審判員として働くことが難しく、ほとんどの審判員が他に職を持って活動しているということでした。さらに、サプライズゲストとしてFIFA審判委員長のコッリーナ氏も来てくださり、直接お話をする機会があり、“なぜ審判をはじめたのですか”と質問したところ“理由はない。なぜなったか分からない”と言われていました。他にも“VARの女子ワールドカップでの導入について“という質問に関しては、女子の試合での予定はないとのことでした。
また、今回のセミナーでは、日本時間の6月29日(木)午前1時より行われました、FIFA ワールドカップグループ予選のブラジルvsセルビアの試合をスタジアムで観戦することが出来ました。私は、初めてのワールドカップ観戦で、テレビで観戦する雰囲気と全く違う会場の雰囲気を味わうことが出来ました。国と国の戦いのすごさを肌で感じました。
また、2日目の午前中には、ロシアの観光地である赤の広場に行き、選手と審判員でチームを作り赤の広場でサッカーをしました。サッカーは世界共通であり、サッカーをすることでコミュニケーションや交流が深まり、とても素晴らしいスポーツだと改めて感じました。
セミナーに参加する前は、リーダーシップというのは私についてきてという強い責任感のある人というイメージでしたが、このセミナーを通して、国や言語は違えども自分らしいリーダーというのがとても重要であると感じました。一人一人違うリーダーシップの要素を持っているので、言葉や行動、気持ちでその要素をどう表現するかが重要です。加えて、もっと自分自身について研究し、良いところを認識する必要があると感じました。このセミナーで学んだことを普段の生活の中から取り入れ、人としても審判員としてももっと成長していくよう努力してまいります。